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2026/07/28

KANAIブログ

  • 不織布事業

「見逃し」をどう減らす? ― 検査に加えた、AIという新しい目

不織布の品質を守る最後の砦が「外観検査」です。
しかしながら、幅が広く1ロール数百メートルにもなる大きな不織布から、小さな異物を見つけ出すのは簡単ではありません。
「どうすれば見逃しを減らせるか」――これは、私たち金井重要工業が長く向き合ってきたテーマです。
本記事では、当社の外観検査がどのように進化してきたか、そしてAI外観検査を加えて何が変わったかをご紹介します。

当社の外観検査<3つのステップ>

当社の外観検査は、いきなりすべてを機械任せにしたのではなく、人の検査を土台に、段階的に進化してきました。

① 人の目だけ・・・熟練した検査員が、表と裏を目視で確認。
② ルールベース検査機+人・・・あらかじめ定めた基準に基づいて製品の合否を確認するもので、カメラが製品の画像を取得し、その画像を解析することで濃淡差などを捉え、人の目の検査を補助する。
③ AI外観検査機を追加(現在)・・・②に加え、AIがより難しい不良を検出。

このように、人の目を起点に、機械とAIを重ねてきたのが特徴です。
なお、ルールベースの検査機とAI外観検査は、現時点で全製品に適用できているわけではありません。
厚みや素材が異なると見え方も変わるため、対象を一つずつ広げている段階です。

「見逃さない」こだわり

当社の不織布製品の一つは、自動車の天井内装材などに使われます。
数センチの不良個所のために数百メールを捨てることはコストも環境負荷も大きくなるため、お客様との取り決めのもと、不良箇所には「ここに不良がある」と印をつけて出荷し、お客様が加工時に不良個所をカットしながら使用します。
この印付けに漏れがあると、お客様の加工後に不良が見つかり、製品全体が破棄対象になることもあります。 だからこそ私たちは、「見逃しを減らす」ことに徹底してこだわってきました。

人の目は、短時間であればとても有効です。微妙な違いを捉える柔軟さは、機械にはない強みです。
しかし、長時間となると、製品1本あたり約1時間、2名がかりで確認しても、熟練度や疲労によってどうしても精度にバラつきが出てしまいます。

見逃しを減らそうと、濃淡差を捉えるルールベースの検査機も導入しましたが、それでも、地合いのムラや、不織布特有の「内部の異物」といった判断の難しい不良は、機械だけでは捉えきれません。
不織布には厚みがあり、表面は反射光で確認できても、透過光で見なければ内部までは捉えられない。この領域の不良が、従来の検査では特に見つけにくいものでした。

AI外観検査を加えて変わったこと

そこで新たに加えたのが、AI外観検査機です。反射光と透過光の両方の見え方をAIに学習させることで、表面だけでなく、内部の異物まで検出できるようになりました。
現在、不良のうち約95%はAI外観検査機が見つけてくれています。検査時間も、製品1本あたり約1時間から30〜35分程度へと短縮しました。
人の目だけに頼るプレッシャーが減り、経験の浅い担当者でも検査しやすくなっています。

また、数字以上に大きかったのは、現場の変化です。 検知の精度が上がったことで、「なぜ不良が出たのか」を突き止め、上流の工程へフィードバックできるようになりました。
検査で流出を止めるだけでなく、そもそも不良を出さないための改善が進んでいます。

不良対応や報告書作成にかかっていた「見えないコスト」も減らすことができましたが、
AIは導入してすぐに使えたわけではありませんでした。

検査機は「入れれば終わり」ではない

導入してからの課題は大きく2つあり、一つは学習データ作りでした。
製品に対して不良が極端に少ないため、AIには良品を覚えさせて“いつもと違う”を検知する方法をとりました。広い検査範囲の中から必要な画像を選ぶのに、多くの工夫と時間を重ねています。

もう一つは照明です。不織布は製品毎の厚みや密度で見え方が変わるため、画像処理に適した照明へ切り替え、光量を自動調整するしくみも整えました。
パートナー企業と一つひとつ課題を解決した、この地道な作り込みが、今の精度を支えています。

「入れれば終わり」ではないというところは、検査の自動化を検討される方に特にお伝えしたい点です。
検査機は、装置そのものの大きなイニシャルコストがかかります。そして、見落とされがちですが、実際に現場で使える精度に届くまでの調整コストとなる、学習データの作成・照明や条件の設定・繰り返しのテスト…これらも相当なコストになります。
当社も、ここに多くの時間と手間をかけてきました。 だからこそ、人の検査を土台に置きながら、効果の大きいところから段階的に広げるという進め方をとっています。

全製品への適用を目指して

条件設定の難しさや設備投資という現実的なハードルはありますが、それでも当社は、全製品へのAI外観検査の適用を検討しています。
厚みや素材の異なる製品にも同じ装置で対応できるよう、検出精度の向上と適用範囲の拡大を進めているところです。

当社の外観検査は、「人 → ルールベース検査機+人 → AIの追加」と、人の目を土台に進化してきました。
大切なのは、AIにすべてを置き換えることではなく、人と機械それぞれの得意なところを組み合わせること。
そのうえで、コストや条件設定の課題と向き合いながら、適用範囲を広げていきます。
私たちはこれからも、品質を通じてお客様のものづくりに貢献してまいります。

不織布の検査や機能性素材に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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